『逃げ水』の歌詞、"逃げ水"のウィキペディア説

逃げ水とは、風がなく晴れた暑い日に、アスファルトの道路などで、遠くに水があるように見える現象のこと。

劇場版『冴えない彼女の育てかた Fine』感想&レビュー(後半)

こんばんみ。天ちゃんです。

それでは冴えカノレビュー後半です。


では、ここから先は冴えカノのグランドフィナーレともなる2つの話について、原作と比較しつつ見ていきたいと思います。


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【原作と劇場版の相違点】

◯詩羽と英梨々の覚悟

《原作》

紅坂朱音が倒れ、倫也は病院に駆けつける。

そこで朱音から現状を聞いた倫也は自分から2人を助けることを決め、大阪に出向く。

詩羽と英梨々はその事実を知るが、英梨々は困惑してしまう。

去年の冬コミと全く同じ状況になったためと、果たして倫也が側にいて絵が描けるのか自分でも分からなかったため。

そのため倫也の決断を聞き、その真意を理解した詩羽は1人で英梨々の説得を開始する。

まず、倫也と英梨々の話を自分の小説の新企画として立ち上げるから、10年前の事件の真実なり心情なり全て教えてくれと迫る。

これに対し英梨々はガチギレし、感情を剥き出しにして詩羽に殴りかかる。

しかし詩羽の全て吐き出せ、前に進め、倫也を諦めろという言葉で詩羽の真意を理解し泣き始める英梨々。

それでも倫也は恵ではなく私達のもとに駆けつけてくれたじゃないかと反論する英梨々に対し、それは倫也が恵を信頼しているからだ、逆に言えば私達は彼に信じられてないのだと諭す詩羽。

これにより英梨々も泣きながら全てを受け入れ、前に進むことを決意する。


《劇場版》

紅坂朱音が倒れ、代打として町田さんと伊織が出向くも先方の説得に失敗。

打開策を考える詩羽と英梨々であったが、相談している内に適役を思いつく。

英梨々は倫也に頼もうと提案するがそれはルール違反だと詩羽は否定する。

でもここで終わったら凄いイラストレーターになるという倫也との約束が果たされないと嘆く英梨々に対し

、もし倫也に頼むなら2つやるべき事があると言う詩羽。

1つは自分達の仕事が終わったら倫也達のゲームを手伝うこと。

もう1つは倫也が恵と結ばれるよう全力で支援するということ。

それを聞いた英梨々は絶句し、その意味を詩羽に問いかける。

それは自分達の窮地に主人公を呼び込むのは英梨々√でもなく詩羽√でもなく、恵√のクライマックスにあたる紛れもない転になるからだと詩羽は主張する。

恵はどうあっても倫也を諦めない、だからその選択は彼らの恋を完成させる一押しになる。

だから今ここで倫也を諦めるか自分達の未来を諦めるかの決断をしろと迫る詩羽。

そして英梨々は号泣しながらも倫也を諦める決断をする。


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はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………………………………

丸戸、お前やっぱり天才だよ…。

自分はこの詩羽と英梨々が覚悟を決めるこの件が大好きで、劇場版ではどうするのかなと思っていたのですがまさかこんな形に落とし込むとは。

原作での倫也の介入は倫也の決断だったため、詩羽はその裏に潜む事実を事実として受け止めていましたが、劇場版ではそれを2人の倫也への想いに重ね合わせ自分達に決断させるなんて…。

初見時思わず「なんでだよ!!なんでなんだよ!!」と心の中で叫びながら涙が止まりませんでした。


今まで散々英梨々、詩羽、恵の3人で倫也の取り合いをしていましたが、ここに来て詩羽は倫也のためにその争いから一抜けし英梨々の後方支援に回ります。それも離脱の方の意味で。ここは原作も劇場版も同じです。


原作では倫也の選択は倫也自身です。ここで倫也が天秤にかけたのは「詩羽・英梨々の将来」と「サークルの夢・恵の攻略」の2つです。後に倫也も語っているのですが、天秤が傾くきっかけになったのは恵ならなんとかなると思ったからです。サークルを恵に任せてしまっても大丈夫。恵を裏切る形になるけれどどうにか出来る自信がある。そう倫也は思ったから英梨々・詩羽の下に行きました。なので詩羽の、恵を信じているから私達の方に来たという読みは完全に正解でした。


劇場版では代わりに詩羽・英梨々が選択をします。確かに倫也なら求めたら来てくれる。けれどもそれは倫也と恵の仲を進展させる足がけになってしまう。劇場版の詩羽のこの説明はかなりメタ的な話ではあるのですが、状況的には理に適った説明です。思えば最初から詩羽は気づいていたんだと思います。もう倫也の横に並び立てるのは恵しかいないのだと。ライブ会場や焼肉屋の席や病院で恵に電話する倫也を見て。だから倫也に助けを求める選択をすれば勝算はなくなると。


どちらの状況でも詩羽が非常にいい仕事をしています。やはりプロの小説家だけあって人の気持ちに敏感で、状況の把握が迅速です。また1つ年上だけあってしっかり大人として振る舞います。別れる場合、英梨々が一番倫也との関係が拗れるのは目に見えて分かっているので、彼女が納得出来るように慎重に言葉を選び、彼女が泣こうが喚こうが全て受け止める。そして前を向けるように支える。本人も損な役回りよねと言っていましたが、ぶっちゃけ英梨々以上に可哀想な人だと思います。本当は自分だって泣きたいほど辛いはずなのに…。原作で英梨々に何度もビンタされながらも全て受け止め、英梨々を諭す姿はかなり心が苦しくなります。ヒロインがヒロインの頬を張る…ん?どっかで見た光景だな。


また、原作の方には詳細に描かれていましたが、英梨々ってこの時はまだ本当の意味でのクリエイターになりきれていなかったんですよね。倫也が女の子として見れない立場、作り手と受け手という決して男と女ではない関係、そこに至れば倫也が側にいると描けないなんて些細な問題は解決する。そのために必要な儀式がここのシーンなんです。


英梨々からしてみればこの時自分の夢を諦めるという選択肢は提示されているようで選択する事は出来ませんでした。ホワアル2の例の押せない選択肢と一緒です。自分が生きるための武器は絵を描く事だけ。もし今回がダメでも倫也は受け入れてくれるかもしれない。でも今倫也の所には羽島出海がいる。自分とは比べ物にならない速さで成長する後輩がいる。だから自分が今一番成長出来る選択をしなければいけない。つまり最初から詰んでいる訳です。


原作では、英梨々は「10年だよ…っ?あいつと出逢って10年なのに…なんで?なんでぇっ?」ともっと悲痛な叫びを上げています。確かに、元々2次元が好きで出会ったのにその2次元によって分断され、また2人でいるために必死で絵を描き続け、ようやく一緒になれると思ったら、今度は側にいると描けなくなり再び離れることに。そして最後にはプロとして生きるためには彼への想いを諦めなければならなくなりました。


凄くなれと想い人に言われたから凄くなったのに今度は凄くなったから本当の意味で一緒にはなれない。じゃあ一体、英梨々の努力になんの意味があったんだよ!と激昂したくなります。確かに意味はありました。努力の甲斐あって同人サークルの売れっ子イラストレーターから超大物商業絵師に飛躍する事が出来ました。しかしそれと引き換えに、英梨々が掲げた世界一幸せなイラストレーターになるという目標の中の1つである、幼馴染みと結ばれる夢は果たされなかった訳です。


原作では、英梨々はこの覚悟の後、自宅で一人静かに絵を描きます。自宅の庭の風景画に幼い頃の倫也と英梨々かもしれない人物を描いていきます。そして、それを見た母親の小百合が英梨々を励ますなどの裏エピソードもありました。

 

英梨々ぃ………ほんとにお前、頑張ったよ…頑張ったのにな……

 

 

 

 

 

 

 

 


それで、ですよ。

 


普通、メインじゃないヒロインにこれだけの事情があったらメインヒロインの立場が無くなってしまうはずですが、加藤恵はそんな英梨々の10年に打ち勝つほどの圧倒的なヒロイン力があります。それが発揮されるのがここからのシーンです。


話をストーリーに戻します。

詩羽と英梨々の締切を伸ばすことに成功した倫也は、作業をしながらも片手間に恵に謝罪文をLINEとメールで送り続けます。劇場版ではちょいちょい文面が映るくらいでしたが原作では全て書いてあります。読んでみると分かりますがマジでキモいです。謝る方向性は間違っているし、そもそも謝るどころか煽ってんじゃねぇかという箇所もあったりと、本当に最悪のラブレターです。しかしこれにより恵は行動を起こすに至ります。


今まで全責任を逃げた倫也に押し付けサークル活動を停止していた恵でしたが、キモいメールに反抗心が生まれ、ヤツがいない間にゲームを完成させて土下座させてやる、という感じでゲームの完成に向けて動き出します。ここは半分は倫也のメール、半分は美智留と出海の前向きな精神によって心変わりしたという感じだと思います。原作では詩羽が美智留に恵説得計画書を送り、その計画書の指示通りに美智留が動いたりとかしていました。


そして、恵、美智留、出海、(伊織)で制作を続ける中、恵は資料集めという名目で、美智留と出海から質問攻めにされます。ここは原作から重要な会話を抜粋し、少しアレンジした形になっています。なので劇場版と原作を1つずつみていきます。


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【原作と劇場版の相違点】

加藤恵の独白

《劇場版》

・結局怒ってるのはサークルを裏切ったからじゃなくて、英梨々達の所に行ったからでしょ?

→そういう風に見てるからそう見えるだけ


・付き合ってんでしょ

→そんなんじゃない


・隠し事してるでしょ

→してない


・いつの間に名前で呼ぶ仲になってんの?

→みんなだって呼んでるじゃない


・倫也と恵にはドラマがないよね

→知らない。私は彼が普通だと思った。だからいいと思った。倫也君は、私の、だよ…


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言ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

遂に言った!

今まで本人にすら言わなかった、倫也に対しての気持ちを遂に打ち明けました。それまでの質問は全てはぐらかしていましたが、最後の最後にドラマがないと言われ、思わず本心を明かしてしまいました。勿論それが周りの目的だったわけではありますが。これにより恵は倫也と向き合う、英梨々達と向き合うことを決意するわけですね。倫也と2人で会話していた時もそうでしたが、流れでそうなってしまったら仕方がないけど、自分からそうなるようには今までしてきませんでした。最初の焼肉屋で詩羽が倫也にキスをした話を聞いた時も、詩羽に「つまりあくまでも私と澤村さんの問題という事でいいのね?」と聞かれても恵は何も言い返しませんでした。しかし、最後はメインヒロインの座を譲り渡さないために、自分から倫也は私のもの宣言をする訳です。


そして、恵は英梨々達の仕事を終わらせた倫也を待ち伏せし、面と向かって想いをぶつけます。倫也に対しどうしようもなく怒っていること、許すつもりはないこと、それでも好きだと言うこと。最後は倫也に言わせる形でしたが。そしてなぜ自分なのか?という問いを倫也にぶつけます。倫也の回答は「恵の前だと素の自分でいられるから」「手が届きそうだと思ったから」「自分でもなんとかなると思ったから」となかなか酷い告白でしたが、恵は「合格だよ」と告げます。


抱き合いながらも倫也への愚痴をやめない恵。そしてそういう雰囲気だからいけると察した倫也は恵にキスをする。あたふたする倫也をなだめようと今度は恵からキスをする。そしてタイミングを合わせ3回目は2人で幸せなキスをして終了。


ほんとに圧倒的なメインヒロインですね…。初見の時ボロンボロン泣きました。原作とは全く違うキスシーンですが、劇場版の方が感動描写が多くなってます。特にキスで2人の歩み寄りを表現しているのが本当に凄いです。1度目は倫也から、2度目は恵から、3度目は2人で。この3回の中で一番感動するのはやはり恵からのですね。1度目は主人公がヒロインを認めるため、2度目はヒロインが主人公を認めるため、ここには原作とは別の物語としてのクライマックスが確かに存在します。


では続いて原作の方ですが、作者本人が外伝のGS3がクライマックスですと言っているように恵の独白とキスシーンの比重・役割が違います。


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【原作と劇場版の相違点】

加藤恵の独白

《原作》

詩羽が美智留(のスマホ)を通じて裏から鋭い質問を出海と共にポンポン投げかける。

・英梨々が倒れた時倫也が駆けつけたの、ほんとは嫉妬してるんでしょ?

→してない

・じゃあ結局何に怒ってたの?倫也が相談しなかったから?親友が抜け駆けしたから?倫也が親友に傾いたから?

→全部…(それぞれに比率がある)


次の質問の最中に裏に詩羽がいることがわかりブチギレる恵。

・キスした?てかもう付き合ってる?

→逆に聞くけどみんなは付き合ってると思う?

→ちなみに付き合ってないよ、まだ


・それはもう仲間にも親友にも遠慮しないってこと?

→ん…


あくまでも巡璃の設定という体で徐々に意志を露わにしていく恵。


・主人公を許すの?

→巡璃はきっとそういう子だから。どんなに迷惑かけられても嫌じゃなければそれでいい。


そしてとうとう恵は自分から心中を吐露し始めます。


「詩羽先輩、あなたにとって倫也くんは特別だったかもしれないけど私には普通だった。だから彼がいいな…と思った」

「なのにどうして私のシナリオには転があるのかなぁ…っ、私はちょっとの幸せでいいのになぁ…っ」

→物語に転が必要かどうかは神様の勝手よ。あなたの物語にはたまたまあっただけ。だから現実を受け入れて粛々と前に進みなさい。それが出来るのはあなただけなのに嘆いてばかりじゃただの怠慢よ


・という訳でどうするの?倫也くん返してほしい?

→どうするも何も倫也くんは元々ウチのサークルの…


・もう一声

→だから倫也くんはわた……の、もの


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あっへぇ…。たまんないっすね。遂に全面抗戦ですよ。原作は本当に非常によく出来ていて、恵が倫也に対して行ったぶった斬りを今度は周りから(主に詩羽から)恵がやられるわけです。しかも美智留や出海の質問って読者が一番気になっていた所なんですよね。結局恵は倫也のことが好きなのか、いつ好きになったのか、英梨々達の事をどう思っているのか。今まで鉄壁の仮面を被っていた恵が片っ端から丸裸にされます。


しかしまぁ詩羽の質問がキレッキレなこと。わざわざ1巻(アニメ1期)や6巻(アニメ2期)の内容を掘り起こして実際ここどう思ってたん?それってこういう事でしょ?と、直球でぶつけてきます。劇場版ではサークルを投げて英梨々達の所に行った話にしか言及していませんでしたが、原作ではほぼ全部追求されます。自分、ここ冴えカノの中で一番好きなシーンなんですよね。主人公がヒロインを選択するのではなくヒロイン同士で決着をつける。特に恵と詩羽はこの件に関しては完全に当事者ですから、いつの間にか女子会トークから恵vs詩羽の一騎討ちになるのが本当に滾るんですよね。あぁ〜これこれこれこれって感じです。


詩羽もまーた大仕事をしていますね。勿論自分から動いてるわけですが。詩羽がわざわざこんな事をしたのには2つほど理由があると思います。

1つはサークルを裏切って紅坂朱音の下に行ったため、サークルを守る義務があるから。倫也への義理とも言えますね。この辺は原作でも美智留に普通に攻められたりしてました。詩羽先輩には裏切った分の責任があるんじゃないかと。詩羽自身はサークルが崩壊すれば倫也のモチベが無くなり自分達の仕事に支障が出るから、と説明していましたが、そんなんほぼほぼ建前ですね。どう考えても自分のためではなく倫也のためです。


そして、もう1つは恵の本心を暴露するため。実際詩羽は倫也と恵が喧嘩して以来ずっと心配していました。そのため恵が倫也を許し、元鞘に戻るためには、恵の心情をはっきりさせる事が必要でした。そして、そんな事が出来るのは自分だけ。しかし自分が直接介入しても説得は出来ない。だから美智留を通じて色々動いていた訳です。また、恵の本心を暴露するのは自分を納得させるためというのも勿論あったと思います。確かに恵と倫也は既に付き合ってるような関係なのは周知の事実ですが、それだけでは詩羽は納得出来ません。それは当然です。詩羽も倫也のことを心から愛しているわけですから。さらに言えば英梨々の慟哭を既に聞いている訳ですから。だからこそ今ここで恵に本音を聞く必要があった訳です。さらに、その上で倫也を許せるように、許せなくても恵が倫也を受け入れられるように導いてあげる訳です。全ては倫也のために。詩羽先輩マジでいい人です…。


にしても最後の倫也くん返して欲しい?はずるい質問ですよね。完全に恵に言わせにいってます。ちなみに原作は、劇場版と違ってわたしの辺りから段々恥ずかしくなってシナシナなってしまいます。超可愛いです。


さて、この後ですが劇場版と同じく恵は倫也の所に行きます。そして倫也の部屋の前まで来た恵は倫也にメールの文面に対する鬱憤をぶつけます。一方倫也は謝罪しながらも恵にもこっちの仕事を手伝って欲しいと願い出ます。実はこの時点では英梨々達のマスターアップがまだ終わってないのです。困惑する恵でしたがそこに英梨々と詩羽が登場しそれでもやってくれないかな?と投げかけます。そして英梨々と恵は泣きながら互いに謝ります。全てのわだかまりを解消し、恵も倫也を受け入れてくれました。そこへ美智留、出海、伊織も合流しオールメンバーで英梨々達の仕事の完遂に取り掛かります。


全部の仕事が終わり倫也の家から帰宅する一同。しかし恵だけは倫也の所に残ります。そして改めて恵に謝罪する倫也。その謝罪の中で遂に倫也は恵に好きだと想いを告げます。しかし恵は返事をめっっっっっっっっっちゃはぐらかします。ここは是非原作を読んで下さい。今までの仕返しと言わんばかりに倫也を弄びます。好きなのは分かったからとりあえず家戻ってお風呂入って歯磨いてから続き話そうかとか言ってきます。加藤恵、魔性の女です。誰も勝てないよ…。倫也も絶叫したり悶絶したりといいようにされます。そして布団の上で告白大会は再開されますが恵はまだ焦らします。倫也に延々好きだ好きだと連呼させ、最後の最後に恵も「…うん、好き」といいキスをします。


…なんですかね。もう誰も丸戸には敵わないと思います。未読の方は是非読んでみて下さい。布団の上で活きのいい車海老の如くビチビチ跳ねると思います。


以上が原作と劇場版のクライマックスです。個人的にはどちらも好きですね。ラストは原作から大幅に改変されていますが、2時間の映画の中に非常によくまとまっていると思います。というかまさか倫也と恵のキスシーンで泣くとは思わなかった。いかんせん原作が↑なので。


では劇場版の続きです。

倫也と恵は付き合うことになり、ゲーム制作も終盤に差し掛かります。しかし完全に倫也と恵がそういう空気で作業しているので美智留と出海は白い目で睨んできます。この辺りの話は原作13巻のキスの後にめっちゃ出て来ます。いかんせん倫也が実体験をそのままゲームのシナリオにしてしまうので恵がまぁ嫌そうにしたりします。


そして、詩羽・英梨々も合流しフルメンバーでの作業になります。そんな中、夜中に1人で外に出てた英梨々の下に倫也が向かいます。そこで倫也は10年前の事を英梨々に謝ります。全部英梨々のせいにしたこと、英梨々の努力を認めなかったこと、英梨々を追いかけなかったこと。そしてこれからは英梨々に追いつくために頑張ると英梨々に誓います。英梨々は倫也に、恵と付き合い始めたんでしょ?と尋ねます。あたふたする倫也を尻目に、全部分かってるから大丈夫と言いつつその場を後にしようとします。しかし扉の前で振り返ると、眩いばかりの笑顔で

 


あんた、あたしのこと、好きだった〜?

 


10年前、好きだった〜?

 


と、投げかけて去っていきます。


……………………………………………。


……………………………………。


……………………。


…………。


あぁ……。


もう声を上げて泣きたい…。映画館じゃなかったら、もう、どうなっていたか分からないです。

割と真面目にアニメでこんなに泣いたの初めてかもしれません。原作でもここまでは泣かなかったです。

映画館を出た後も、英梨々の、大西沙織の、このセリフが耳から離れませんでした。

作画、演出、演技、そういった製作陣の英梨々への愛が溢れんばかりに伝わってきました。

いや、ほんと……ズルくない……?

ここは本当にアニメ史に残る名シーンだと思います。

本当に、最高の、シーンです。


原作ではこの英梨々の別れのシーンに続いて、詩羽の別れのシーンもありましたが、劇場版では丸々カットされています。その代わり後で詩羽と英梨々のシーンが1つ追加され、そこで詩羽が語っております。


さて、倫也と別れた英梨々は恵と一緒にお風呂に入ります。そこで恵は英梨々にごめんね…と語りかけます。詩羽と恵ではあえて面と向かって話さなくても後腐れはないと思いますが、英梨々と恵では話が違います。恵と英梨々がこれからも親友でいるためには恵が英梨々に向き合う事が必要です。それがこのシーンです。観ていると恵と英梨々の友情がヒシヒシと伝わってきます。一度絶交していましたし、親友同士で1人の男を取り合ってきたため、一歩間違えれば不倶戴天の敵になっていたかもしれないのに、これからもいい関係でいられるんだろうなと感じます。ほんとこの2人の関係、美しいですね…。


では続きです。朝方、英梨々と詩羽は倫也の家から去ります。詩羽は英梨々に次回作について話します。新作はラノベのようです。↑でも解説しましたが原作のGS3巻にあった倫也と英梨々、倫也と詩羽の話です。実は詩羽も自分の事も話にしていました。ちなみに劇場1週目特典の小説によるとタイトルは「世界で一番大切な、私のものじゃない君へ」となっています。もうね…もう。そして2人で坂道を歩きながら詩羽は英梨々に呼びかけます。だから前を向きなさい、倫也がついて来られないくらい全力で走り続けなさい、と。詩羽の言葉を聞いた英梨々はまた泣き出してしまいます。そんな英梨々を励ますように続けます。


「倫也は間違いなく私達に恋をしていた。例えそれが自分達の作品だったとしても。それは私たち。大丈夫。倫也は私達を追い続ける。偉大な作家とファンとして。だからあなたも走り続けて、待ちましょう」


そう言って励ます詩羽も途中から涙目になっています。英梨々に至っては詩羽にしがみつきながら、倫也ぁ…っ、倫也ぁ…っと泣きじゃくっています。しかし彼らの行先には光が満ちており、彼女らの将来が希望に溢れている事を予感させます。


ここは劇場版オリジナルのシーンです。原作の詩羽の別れがこのような形にアレンジされました。え、詩羽ないか?と思っていたら、これまた見事な泣き演出でブチ込んできました。原作でも詩羽は最後の最後でも強がりを見せます。それこそ真正面から倫也に、あなたは間違いなく私に恋をしていた。そしてこれからもし続ける、と言って去って行きます。か、カッコいい……。


ここからも分かる通り、この2人って決して滑り台じゃないんですよね。大人の都合や人気投票でハブられたヒロインとは訳が違います。たとえ主人公と結ばれなかったとしても好きでいられる、そんな力強さがあります。この辺りは本当に丸戸天才だなと思います。いや凄いよ…ほんとに…。


さて、劇場版もこれでほとんど終わりです。この後は冬コミで無事完パケが出せ、見事完売。そして時は過ぎて卒業式。恵と英梨々が泣きながら抱き合います。この絵完全に原作12巻の表紙ですね。思わずウルっときました。また、倫也の制服のボタンを奪い合う出海と英梨々。その傍らではちゃっかり既にボタンを手に入れてる恵。恵、お前そういうとこだよ。そして、例の坂を歩く倫也と恵。最後は恵の一言で終わります。

 

わたしは、あなただけの、メインヒロインになれたかな……?


以上で終わりです。エンドロールでは本当に詩羽と英梨々がキャストの下の方になってましたね(笑)。クレジットによると劇中画はまたも深崎暮人・黒谷忍さんのご夫婦コンビです。個人的には、なかむらたけしがイラスト協力にいるのがジーンとなりました。そして全員首を傾げたのが、劇中曲のラブ・ストーリーは突然に、ですね。どこのかぐや様だよ。てかどこだよ、使ってたの。


エンドロールも総監督・亀井幹太の文字が流れ、終わったーと思っていたら、突然恵が「私たち、別れよう」とか言ってなんか始まります。ぶっちゃけ開始1秒で大体皆んな分かっていたと思います。どうせ詩羽先輩よな。原作にもない話で、時系列的に何年後か正確には分かりませんが、社会人になった(と思われる)倫也と恵が出て来ます。ここの恵が着ているスーツ、雪菜が着ていたスーツにめっちゃ似てると思うのですが有識者の皆さんどうでしょう?あと、倫也がランスロスカスカ周回してるのクソ笑えますね。サポートを最前に配置する精神は理解出来ませんが。


恵に切られボロいアパートに帰宅する倫也。てかこの茶番、なげぇ(笑)。完全にクズの鏡みたいになった伊織が出てきます。というかこのレビューでほとんど言及しませんでしたが、伊織めっちゃいい奴なんだよなぁ…。倫也が挫けそうな時に何度も創作をやめるなと忠告してくれたり、倫也がサークルを抜けている間もしっかり運営してくれたり、実は恵の説得にも一役買ってくれていたりとほんとにいい奴です。


場面変わって、川辺で一人、人生のどん底を味わう倫也。そしてその前に現れたのは髪型をショートヘアにした大人詩羽。知ってた。そして流れる小田和正。ここかぁ。例のクレジットここかぁ。このおまけパート皆んなゲラゲラ笑いながら観てましたね。しかしこれほんとどっかのかぐや様で観た光景ですね。そしてバックに手書きで表示される「冴えない彼女の育てかた 最終章」。codaって読むんでしょうねきっと。


で、倫也のツッコミがあり詩羽の書いた脚本を投げ散らかす英梨々。机を全力でバンバン叩く英梨々、ほんと可愛いですね。しゅき。喫茶店で打ち合わせをする詩羽、英梨々、伊織、倫也。なるほど!今までのは全て詩羽の書いた脚本だったのか!(棒)。どうやら倫也は起業し代表になり、伊織はプロデューサーとして倫也と一緒に働いているようです。詩羽の予言通り、倫也の宣言通り、遂に一緒に仕事を始める訳ですね。そしていつの間にか詩羽と英梨々はお互い下の名前で呼び合っています。原作ではGS3巻の散々泣きあった後に名前で呼び合うシーンがありましたが、まさかここに使うとは。

ところでここの髪を下ろした大人英梨々、めっちゃ英梨々のお母さんに似てるんだよなぁ……


うわ、死ぬ……


やっぱり俺はお前が好きだ。愛してるぞ。


さて、本当の大人恵が出てきました。なんかもうザ・彼女って感じですね。なんかこの子が倫也の股間に顔埋めてると思うと胸が熱くなりますね。抱擁感とか母性とかなんか色々と漂ってます。キスしようとした倫也を制し「続きは帰ってからね」とか言うし。一体家で何するんですかねぇ。劇場特典の小説では倫也の童貞力が云々とか、原作FDでは意味深な全裸ベットの恵とか出てきてましたし、何よりライターがライターなので行くとこまで行ってるんでしょうね。コミケで同人でいいからそこら辺の話出ないかなぁ…。あ、ちなみに恵の肩書はディレクター兼副代表だそうです。


そして2人はしっぽりシーンのため倫也のマンションへ。って、なんかナチュラルに恵と同棲してるんだけど。しかしリビングに入ると、勝手にテレビでゲームをしている美智留と出海。ここの恵がガクッと壁にもたれかかってるのが最高ですね。絶対イチャイチャしようと期待に胸膨らませていたんだと思います。いやほんとにどんだけバカップルなんだよ。


仕方なく玄関の靴を揃える恵。と、ここで靴が人数より一足多いことに気づきます。キッチンを見ると勝手に食器棚を物色している英梨々。さらには窓のサッシを指でなぞりフッーして一言、まぁこんなもんかな。ここの英梨々クソ可愛い過ぎて死ねるんだけど。なんかもう完全に大人の女性になりましたね。詩羽とはまた違った色気を携えています。


さて、その詩羽ですが、人ん家の風呂で勝手にシャワー浴びてます。出海がポロっと言った「2人とはこれからも〜」というセリフで、"2人?"と違和感を感じすぐさま風呂場に直行する恵。全裸の詩羽と対面した恵は、挨拶も程々にバチバチと火花を散らします。


そしてなぜか倫也が土下座。普段もこんな風に結構尻に敷かれてるんだろうなぁ。で、なんやかんや恵も許しちゃいます。でも邪魔された腹いせに丁度死角になる所でキッスします。2度も。ここで恵の左手薬指に何やら光るものが見えます。でも表札の名字は変わってません。なるほど。


そして最後は全員で鍋を囲んで乾杯です。この時後ろの本棚に出海以外で撮った集合写真が飾ってありますね。恐らくアニメ1期第0話のものです。そして画面には本当におしまいの文字。ここは2期第11話の裏コメの亀井監督の説明とか聞いておくとちょっと面白いですね。そのまま暗転し声優陣のマジ乾杯で終わります。いや〜この終わり方、色んな意味で拍手喝采ですね。


という訳で以上、劇場版「冴えない彼女の育てかたFine」のレビュー後半でした。

なんかこれ映画のレビューなんだか冴えカノのレビューなんだかよく分からなくなってますね。すいません。

ぶっちゃけまだパンフレット読んでないのと、どうせ円盤出たらオーコメで丸戸が全部解説してくれると思うので、その時が来たらこの記事はゴミ箱にでもポイしようと思います。

本当に素晴らしい、最高の映画でした。ここ10年の劇場アニメの中ではダントツに質の高い作品だと思っています。復活しないかなぁ。マジで続きが見たい。とか思っていたら劇場特典の小説、7週連続で出るんですね。それってもう単行本1巻くらいはあるんじゃ……。詩羽のシナリオ通り最終章とか言って社会人編出してくれてもいいのよ?そういう終わったと思ったら終わってなかったとか言うのあのゲームで慣れてるから。

 

 

執筆者 : 天ちゃん